コラボ小説 | ナノ
 good morning! 4

「おはよう、若」

「…はよ…」


ぐったりとした顔で出てきた男の子−若が挨拶を返した次の瞬間、ゴッ、と鈍い音を立てて、若の頭に手刀が直撃した。うわ、と雪菜が声を漏らす。
若が倒れると同時に部屋の中からもう一人の男の子が出て来た。
雪菜は若干ひきつった笑みで挨拶をする。


「お、おはよう、バージル」

「…ああ」


無表情で男の子−バージルはこちらを見た。
バージルは3番目に造られた『sing doll』で、自分にも他人にも厳しい性格をしている。特に同じ時に造られた(まあ、つまりは双子だ)若には容赦ない。


「お前、いい加減自力で起きたらどうだ。今日もリアラに起こしてもらっただろう」

「あ、あはは…」


バージルの厳しい言葉に、雪菜は乾いた笑みを浮かべる。
深くため息をつくと、バージルは隣の部屋に視線をやった。


「次は髭か」

「ああ、待ってバージル!私が起こすから!」


慌てて雪菜は隣りの部屋に行こうとしたバージルを止める。次の被害者を出さないために来たのに、バージルが先に行ってしまったら意味がない。


「お前がか?」

「うん、今ちょうど起こしに行くところだったの」


雪菜の言葉にふむ、と頷くと、バージルは踵を返した。


「ならお前に任せる。さっさと起こして下に来い」

「うん。え、あれ、若は?」

「放っておけ。起きないこいつが悪い」


え、それ、起こした意味なくない?と心の中で突っ込む雪菜に構わず、バージルはさっさと階段を下りてしまった。


「あー、えーっと…」


意味のなさない声を溢しながら、雪菜は考える。


(…うん、とりあえず若を起こそう)


そう決めた雪菜は、足元に倒れている若に屈み込んで声をかけた。


「若、大丈夫?」

「う゛ー…」


唸りながら何とか顔を上げた若に雪菜は苦笑する。


「今日は蹴りでも入れられた?」

「当たり…」


頷く若に、雪菜はよしよしと彼の頭を撫でてやる。
若は3番目に造られた『sing doll』で、明るく、喜怒哀楽のはっきりした性格と、同じ時に造られたバージルとは真逆の性格をしている。


「もうみんな起きてんのか?」

「ううん、まだおじさんが起きてないから、今から起こしに行くところ」


雪菜がそう答えると、若はえー、と不満そうな顔をする。


「ずりぃ、おっさんはバージルの蹴り受けないのかよ!」

「あーまあ、私が起こしに行くって言ったからねー」


あはは、と雪菜が苦笑を漏らすと、若が拗ね始めた。


「いいよな、おっさんは雪菜に起こしてもらえるし、雪菜はリアラに起こしてもらえるし」

「まあ、毎日起こしてもらってるわけじゃないんだけどね」


雪菜は、若や髭のように毎日起こしてもらっているわけではない。大体は自力で起きている。
まあ、バージルからしたら、回数が多いのかもしれないが。


「リアラは優しいだろ?俺なんて毎回バージルに叩き起こされてるんだぜ」

「あー、うん…」


今までのバージルの起こし方を思い返し、雪菜は何ともいえない顔をする。
何で俺ばっかこんな起こし方されんだよ…としまいにはぶつぶつ文句を言い始める若。