コラボ小説 | ナノ
 have a hunch

その時テレビに電源を入れたのは何気ない行動で、丁度キャスターの声が聞き慣れた町の名を読まなければすぐにでも下らないコメディーの流れるチャンネルに変えていた事だろう。ニュース番組が伝えるのは連続通り魔事件についてで、髭はピザを咥えたままテレビ画面を凝視していた。


(通り魔、ね…)


この辺りも物騒になったものだ。そう思いながらピザを噛み千切り咀嚼しつつリモコンを手に取る。ボタンを押す寸前で、彼の動きが再び静止した。


(アイツ、今日は出掛けるって言ってたな)


確か、リアラは紅と出掛けると言っていた筈だ。たった今キャスターが口にした名の町へ。


「………」


胸の奥に重石を載せられたような漠然とした不安。嫌な予感に眉根を寄せる。

ーーーRRRRRR!!

と、突然鳴った携帯電話に、髭は視線はテレビ画面に向けたまま通話ボタンを押した。


『なあ、変な感じしねえ?』

「What?」


何の前触れもなくそんな事言われても。そう返そうとして、声の主が若だという事に気付いた髭はさっきまで自分が感じていた不安を思い出す。


『リアラと紅、二人で出掛けてんだろ?』


髭も若も、勘は良い方だと自負している。彼女の元へ行かなければならない気がした。


「…迎えに行くぞ」

『分かった』


それだけ言うと、携帯電話をポケットに突っ込みテレビの電源を切る。


(何事も無けりゃいいんだが…)


この不安が杞憂で済めば良い。願いつつ、髭は部屋を後にしたのだった。