少し開いたカーテンの隙間から射し込む朝日に顔をしかめ、ダンテは目を開ける。
「ん…」
ゆるゆると瞼を上げ、窓の外を見やる。外の明るさに、ああもう朝か、と心の中で呟く。窓からベッドへと視線を移すと、そこには眠るリアラの姿。
「………」
耳を澄ませないと聞こえない程に弱々しい呼吸を繰り返す姿に、ダンテは口を引き結ぶ。
あの後、雨が降る中、血だらけのリアラを抱え、急いで事務所に戻った。事務所で帰りを待っていたレディは弱ったリアラの姿を見るや否や、現状を察したのかすぐにタオルと着替えを用意してくれた。
レディがリアラの身体についた血を拭い、着替えを済ませた後、俺は自室のベッドにリアラを寝かせ、様子を見守った。そこから記憶が途切れているのから察するに、どうやら、そのまま寝てしまったらしい。
(たぶん、傷は治ってるだろうが…)
リグレットに魔力を取られ、その上魔力をギリギリまで使ったため、傷の治りは酷く遅い。血が止まったのも事務所に着いた頃で。
眠るリアラを見つめ、ダンテは思う。
(お前は、本当にこれでよかったのか…?)
母親の仇を討つために、デビルハンターになって、旅をして。人が苦手だと言いながらも他人のことばかり考えて、心配して、自分のことを少しも考えない。自分の幸せなど、考えたこともないというあの言葉に、彼女の気持ちが現れているようでならない。
(考えたって、わかるわけがないのにな)
答えなんて、本人にしかわからない。だけど、考えずにはいられない。自分らしくない行為にダンテがため息をついた時、部屋の扉が音を立てて開いた。
『起きたか』
「ケルベロス…」
部屋に入ってきたのはケルベロスだった。ケルベロスはベッドに近寄ると、傍に座っていたダンテを見上げ、口を開く。
『お主に、話がある』
「話?」
『そうだ。…主に、関係のあることだ』
そう言い、ケルベロスはベッドで眠るリアラに視線を移すと、何かを思案するように、す、と目を細める。
「…わかった」
『昨日、雨の中帰ってきてそのままだろう。先にシャワーを浴びてこい、話はその後でいい』
「…ああ」
ダンテが頷くと、ケルベロスは扉の隙間から廊下へと出ていく。ダンテは再びリアラを見つめてからゆっくりと立ち上がり、部屋を出た。