「部屋は空いてるところを使ってくれて構わない。ああ、でも比較的きれいなのはここかもな」
ダンテの後について二階に上がったリアラは、ある部屋を紹介された。
奥に一つ古びたカーテンのかかった窓があり、窓際にはベッドが、反対の壁側にはクローゼットがある。
「一ヶ月ぐらいは使ってないが、他の部屋よりはきれいだろ」
「誰か、使ってたんですか?」
何となく浮かんだ疑問をリアラは口にする。
ダンテの部屋は空き部屋を挟んだ向こう側だ、なら一人暮らしだし、普段使うことはないだろう。
ダンテは頷く。
「ああ、相棒がな」
「相棒?」
「俺の仕事のパートナーやってる奴がいてな、たまにこの部屋を使ってるんだ。といってもふらりとどっか旅に出ちまうから、いつ来るかわからないんだけどな」
そう言って苦笑するダンテに、リアラはためらいながら尋ねる。
「…使っちゃっていいんですか?」
「どうせいつ戻ってくるかわからないしな。戻ってきた時は事情を話すさ」
だから気にするな、と言い、頭に手を乗せられたリアラは頷く。
「…あの、一応掃除してもいいですか?」
比較的きれいとはいえ、使われたのは一ヶ月前だ。掃除をしておいた方がいいだろう。
「ああ、いいぞ。お前の部屋だからな、好きにしていい」
「ありがとうございます。じゃあ、この部屋の掃除が終わったら、他も掃除していいですか?」
「今日やるのか?」
「はい。せっかくですから、事務所全部きれいにしちゃいます」
「そうか?お前がいいって言うならいいが…」
「ありがとうございます。よーし、がんばるぞ!」
汚さないようにと白いコートを脱ぎ、さっそく掃除の準備を始めたリアラは知らなかった。
後々、事務所内の凄まじさを知ることになるとは―。