「悪いな、ミネラルウォーターしかなくて」
「いえ、ありがとうございます」
ミネラルウォーターの入ったコップを受け取り、リアラは礼を言う。リアラと向かい合うように向かいのソファに座ると、ダンテは尋ねる。
「…で、どうだった?また旅をしてみて」
「あまり気持ちに変わりはありませんけれど、久しぶりに知り合いに会って…悪くはなかったです」
「そうか」
苦笑しつつ頷くと、ダンテはコップに口をつける。
「この後はどうするか決めてるのか?」
「え?」
ダンテの言葉にリアラは目を瞬かせ、しばし考える。
この旅はダンテを探すのが目的で、そのためだけにひたすら進んできた。だからその後のことなんて何も考えていなかった。
「特に、何も…」
「そうか。デビルハンターは続けるのか?」
「はい。…まだ、目的を達成してませんから」
途端にリアラは険しい顔つきになる。何となく理由を察したダンテは静かに問いかける。
「…おばさんのことか?」
「…はい。母様を殺したあいつを倒すまではハンターを辞める気はありません。あいつだけは、絶対許さない」
そう言い、リアラはギュッ、とコップを握りしめる。ダンテはしばし何かを考えるように腕を組むと、リアラを見て口を開いた。
「…しばらく、ここに住むか?」
「…え?」
予想もしなかった言葉に、リアラは目を見開く。リアラを見つめ、ダンテは続ける。
「目的が達せられてないならまた旅に出るんだろうし、フォルトゥナに籠る気はないんだろ?」
「まあ、そうですね…」
仮にフォルトゥナに戻ったとしても、またすぐに旅に出てしまうだろう。リアラが頷くと、だろ?とダンテも頷く。
「ここだったら悪魔関係の依頼も入る。お前が探してる悪魔も見つかるかもしれないだろ?」
まあ、それ以外の依頼もよく入るけどな、とダンテは苦笑する。戸惑いつつ、リアラは尋ねる。
「…いいんですか?」
「構わないさ。一人暮らしだし、一人ぐらい増えたって変わらない。料理はできるだろ?」
「あ、はい。家事は一通りできます」
「なら、料理とか掃除とか、そういうのをやってもらえると助かる。俺は苦手なんだ」
いつの間にか住むことで話が進んでいるが、歓迎されている、ということなのだろう。こくりと頷くと、リアラはぺこりと頭を下げた。
「…わかりました。これから、よろしくお願いします」
「ああ。よろしくな、リアラ」