「すごい…確かにここからなら、街を一望できるわね」
リアラが来たのは、街を一望できる高台だった。手には、一輪の白い花を持っている。
「これね」
リアラは一つだけぽつんとある小さな墓の前に立つ。そこには、『ニール・ゴールドスタイン』と名が刻まれている。―スミスが教えてくれた、彼女の眠る墓だ。
リアラは墓の前に持っていた花を添える。その時、ある物に気づいた。
「あれ…?」
誰かが来ていたのだろうか、墓の前には枯れた一輪の花が添えられていた。枯れ具合からして、一ヶ月は経っているだろうか。
(もしかして、ニールさんが銃をあげたっていう人が来たのかな)
彼も、ニールに会いに来たのかもしれない。何せ、息子のように思われていた人だから。
リアラは立ち上がると、墓の前で手を合わせる。
「………」
しばらく黙祷すると、目を開け、リアラはニールに話しかけるように口を開いた。
「…初めまして、ニールさん。あなたの友人であるスミスさんからあなたの造った銃を受け取りました、リアラ・フォルトゥナといいます」
柔らかく微笑み、リアラは続ける。
「私、あなたの銃にいつも助けられてます。使いこなせているかどうかはわかりませんけど…一生、この子を使い続けていくつもりです」
そう言うと、リアラはペコリと頭を下げ、その場を後にしようとした。
その時。
―その子を、大切に使ってやっておくれよ…―
「!」
ふいに聞こえた声に、リアラは振り返る。だが、そこには彼女の墓が佇むだけで。
しばらく墓を見つめると、リアラは目を細めて笑った。
「…絶対、大切にします」
そう告げると、今度こそリアラはその場を後にする。
高台に、優しく風が吹いた。
***
2013.10.19