その夜―。
寝静まった商店街にべチャリ、べチャリと濡れた物が床につくような異様な音が響く。大きな身体を揺らし、ゆっくりと歩いていた影は一つの店の前で歩みを止めた。
『匂う…匂うぞ…旨そうな金属の匂いだ…』
ぞっとするような声を響かせ、店の屋根に飛び乗ろうと影が身を縮めた、その時。
「やっと来たのね」
『!』
突如上から声が響き、影は顔を上げる。屋根の上に、三日月を背に女が腰かけていた。
『貴様、何者だ…!』
「あなたに名乗る名はないんだけどね。デビルハンターです、あなたを狩りに来ました」
律義に答えると、女―リアラは立ち上がる。アイスブルーの髪が月の光により煌めく。
『ハンターごときが俺を狩れるとでも?笑わせるわ!』
「それは戦ってから言ってほしいわね」
手を掲げると、リアラはレイザードを発動する。彼女の両手に現れた鉤爪を見て、悪魔は目を見開く。
『金属…!しかも、魔力を感じる…!まさか、魔具か!?』
「だから何?」
手を降り下ろすと、リアラは冷たい目で悪魔を見下ろす。
『まさか、こんなところで旨そうな金属…しかも、魔具に会えるとはな!』
「言っとくけど、食べさせる気はないから」
そう言うと、リアラは悪魔に向かって飛び下りた。
「Mission start」