奥の住居スペースに案内され、お互いにソファに座ると、リアラは話を切り出した。
「店に来るであろう悪魔を退治してほしい、と聞きましたが」
「ええ。依頼の内容はどこまでお聞きになりましたか?」
「ここ最近、金属を扱う店が悪魔に襲われて、商品を喰らっている、と。その悪魔があなたのお店近くの店を襲ったということまではお聞きしました」
「そこまでお聞きなら、話は早いですね。そうです、ここ最近…一ヶ月程ですね。一夜に一軒、順にその悪魔に襲われているんです。昨夜は五、六軒先の店が襲われました。順に襲っているなら、次は私の店でしょう」
「なるほど…」
頷き、リアラはスミスに確認する。
「それで、商品を守って頂きたい、と」
「ええ。でも正確には、商品というより、ある物を守ってもらいたい、なのですが」
「?」
リアラが首を傾げると、スミスは立ち上がり、壁に掛けてあったある物を持って戻ってきた。
「これです」
「わ…」
テーブルに置かれた物に、リアラは思わず声を上げる。
それは、一丁の銃だった。コルト・ガバメントをベースにしたと思われる外見ながら、大きさは元より遥かに大きい。無骨ながらも美しさを感じさせる形だ。銀の銃身が日の光を受けてキラリと光る。
「きれい…」
ポツリと呟かれたリアラの言葉に、スミスは目を見開く。はっと我に返り、慌ててリアラは口を開く。
「あ、す、すいません…!仕事に関係ない話をしてしまって…!」
「いや…。そう言ってくれたのは、あなたが初めてです」
優しく微笑むと、テーブルの上の銃を見つめ、スミスは語り出す。
「昔、友人が私にくれた物でしてね。というよりは、私が頼んだ、と言った方が正しいのでしょうか。その時、彼女は息子のように思っていた人物に銃を造っていましてね。私が冗談半分に昔馴染みの私にも造ってくれと頼んだら、今造っている試作品でいいなら、と完成した後に私にくれたんですよ。…その後、彼女は事故で亡くなってしまいましたが」
「そうなんですか…」
「ええ」
スミスが頷くと、リアラは銃を見つめ、言った。
「左手用なんですね」
「ええ。どうやら渡そうとしていた人物は速射を得意としていたようで、この銃は普通の銃より倍の弾丸が装填できるように造られています。左手用なのはたまたまのようですが」
答えると、スミスはリアラを見つめ、続けた。
「これは友人の大切な形見なんです…悪魔に食わせるわけにはいきません」
「わかりました。必ず、守ります」
力強く、リアラは頷いた。