一週間後、リアラはバー『Siren』でロイと話をしていた。
ビールを飲みながら、ロイは呟く。
「しかし、まさか五日で受けた依頼を全部終わらせてくるなんてな…」
「全部下級悪魔だったもの。簡単だったわ」
なんてことはないと言うようにリアラは答える。
ロイの言う通り、リアラは当初宣言した一週間という期限より早く、たったの五日で終わらせてしまった。リアラとしてはそのまますぐにここを出発してもよかったのだが、ロイが「久々に会ったんだから、ゆっくりと話がしたい」と言ってきたし、それなら残りの滞在日で必要なものを買っておこうと思い、二日間、ここに留まっていた。明日には出発する。
名残惜しそうにロイが呟く。
「もう行くのか…。もう少しここにいればいいのに」
「言ったでしょ、私は人を探してるの。どの街に住んでるかわからないし、そうなると手早く動かないと」
そう言い、水を飲むリアラに、ロイは肩を竦める。
「まあ、お前がそう言うならしょうがない。それに、今回は助けてもらったし、無理矢理引き留めることはしないさ」
「いいえ、こっちも旅費が稼げて助かったわ。ありがとう」
リアラが笑って礼を言うと、ロイも笑って返す。
「明日出発なんだろ?今日くらいは俺のわがままに付き合って、一緒に酒飲んでくれないか?」
「今日は仕事もないしね、いいよ」
「そうこなくっちゃな」
嬉しそうに笑うと、ロイはカウンターにいるマスターに何かを注文する。
しばらくしてマスターが持ってきたものに、リアラは目を見開く。
「これ…」
「懐かしいだろ?」
そう言って、ロイがリアラの前に置かれた飲み物を指差す。
「カルーア・ミルクか…。懐かしい、最近飲んでなかったのよね」
過去を思い返しながら、リアラはグラスに手をつける。
18歳になり、お酒が飲める歳になった時、ロイが「飲みやすいから」と最初に勧めてくれたカクテル。確かに飲みやすく、一番最初に好きなお酒になったことを覚えている。
「んじゃ、お前の旅立ちに乾杯といくか」
そう言い、ロイがビールの入ったジョッキを持ち上げる。笑って礼を言うと、リアラもそれに倣い、カクテルの入ったグラスを持ち上げた。
「「乾杯」」
チン、と音を立てて、ジョッキとグラスが合わさった。
***
2013.6.6