夜、街中のとある屋敷にて。
リアラは敷地内の庭で何かを待つように立っていた。
ロイから聞いた依頼内容は、『廃墟になった屋敷に悪魔が住み着いているので退治してほしい』というものだった。
回りに気を配りながら、リアラは目を細める。
(…確かに、悪魔の気配がするわね)
屋敷の敷地内に入った瞬間、すぐに察知した気配。それも、一体や二体、という数ではない。
リアラは意識を集中して、気配の数を探る。
(…二十体、か)
広い屋敷とはいえ、よくぞまあこんなにたくさん集まったものだ。
それに、あちらもこっちの気配に気づいたのか、徐々にこちらへ向かってきている。
(スケアクロウとメフィストか…。珍しい組み合わせ)
気配からどの悪魔か識別したリアラは目を瞬かせる。
「…ま、いいか。全部倒せばいい話だし」
ぽつりと呟き、リアラは周りをぐるりと見やる。徐々に悪魔がリアラを取り囲み始めていた。
「じゃあ、久しぶりの仕事といきますか」
そう言うと、リアラは腕を上げる。腕につけられた二つの華奢なリングが交差したブレスレットが微かな音を立てる。
「いこうか、レイザード」
リアラがブレスレット―魔具の名を呼ぶと、ブレスレットの交差部分に嵌められた青い石が光り、リアラの両手を包み込んだ。
姿を現したのは、手を包み込むような金属製のグローブ。手の甲には獣の爪を思わせる白銀の爪が収納され、手首には先程のブレスレットが動きを制限しないように、ぴったりとフィットしている。
リアラが腕を振ると、その動きに合わせてシャキン、と音を立て、収納されていた爪が指先に固定された。
「じゃあ、始めますか」
そう言うと、リアラの纏う空気ががらりと変わった。抑揚のない声で呟く。
「Mission start」
言うと同時に、リアラは悪魔の群れの中へと飛び込んだ。