―二週間後。
光を浴びて白く輝く雪原に、二つの影があった。
二つの影が交差するたびに金属特有の高い音が響き、目には見えない攻防が繰り広げられる。
やがて、一際高い金属の音が辺りに響くと、二つの影は腕を下ろした。


「だいぶ腕が戻ってきたな」


アイスブルーの髪の男―ゼクスが言うと、彼と向かいあっていたもう一つの影が頷く。


「ええ、父様のおかげです」


ゼクスと同じ髪色の女―リアラはにこりと微笑む。
ゼクスの肩より少し低いくらいの身長にすらりと伸びた手足、人より少し白い肌。そして、後ろ髪より長い両頬の髪を乳白色のリングで留めている。
彼女の―リアラの本来の姿だ。
ダンテがここを出てから十日後、ようやくリアラは元の姿に戻った。それでもまだ魔力が戻りきっていなかったし、身体も本調子ではなかったため、負担がかからない程度に鍛錬を始め、最近、やっと調子が戻ってきたところだった。


「今日はこれで終わりにしよう。ずっと動きっぱなしだったからな」


そう言い、ゼクスは空を見上げる。日は真上に昇り、昼であることを告げている。
リアラもゼクスと同じように空を見上げ、呟く。


「もう二時間も動いてたんだ…」


実感した瞬間、疲労感がリアラを襲い、リアラはふう、と息をつく。
自分より遥かに実力が上の父親との鍛錬は、いつも緊張を強いられる。十三年前に鍛錬を始めたころよりは実力はあるだろうが、いつになったって勝てる気はしない。
当たり前といえば当たり前だ。自分は半魔、父親は悪魔。人間には考えもつかないほど数千年もの永い時を生き、過酷な魔界で「凍土」と呼ばれる一画を統べるまでに至ったことを考えれば、人間の寿命しかなく、まだまだ未熟な自分は到底敵わない。
それでも、とリアラは思う。


(いつか、父様に追いつきたい。そしてできるなら…父様を超えたい)


そんな夢が実現するかどうかなんてわからないけど。ずっと、追いかけ続けたいと思う。
そして、追いかけ続けていたら、きっと。


(きっと…あの人にも、追いつける気がする)


自分を探しに来い、ともう一度外の世界に出る勇気を、背中を押してくれた、あの人に。
様々な決意を込めて、リアラは先を歩く父親の背中を見つめた。




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