「俺は、明日にここを発つ」
その言葉にリアラは目を見開き、俯く。
「そう、ですか…」
明日とは急すぎる気もするが、自分のために何日もここに居てくれたわけだし、デビルハンターの仕事も再開しなければいけないだろう。
でも、とリアラは思う。
「やっぱり寂しいですね…」
何日も居てくれて、たくさん話をしたとはいえ、九年ぶりの再会で。もっともっと、話をしたい。
そんなリアラの頭にぽん、と手を置くと、ダンテは言った。
「…お前、もう一回旅に出る気はないか?」
今度は、俺を探しに。
ダンテの言葉に、リアラは顔を上げる。
「え…?」
「このまま人間が苦手でいるのはもったいないだろ。俺を探しながら、もう一回人間を見て回れよ」
そうしたら、考えも変わるかもしれないだろ?そう言われて、リアラは目を瞬かせる。
自分はほとんどここで過ごして来て、外の世界のことを知らないことは自覚しているし、彼が言うようにもう一度旅に出て人間(ひと)を見て回ったら、この考えも変えられるかもしれない。
一度出て見たものだけで決めてしまったら、きっと何も見えない。もっと見えるものが、見るべきものがあるはずだ。
だから、だからもう一度。
「外を見たい…旅に、出たい」
リアラがそう呟くと、そうこなくちゃな、とダンテが笑ってリアラにウィンクした。
「俺はある街で事務所を構えてる。そこで、お前が来るのを待ってるぜ。その時はぜひとも、元の姿で会いたいもんだ」
「ええ。今度会う時は必ず、元の姿でお会いします」
約束です、とリアラが言うと、ダンテは嬉しそうに頷く。
「きっと、元の姿のお前はきれいになってるだろうからな」
その言葉にリアラは目を見開くと、何かを思い出したのかくすくすと笑った。
「どうした?」
「お兄ちゃん、九年前に再会した時、『お前、将来きっと美人になるな。楽しみにしてる』って言ってたのを思い出して」
覚えてる?と聞かれ、ダンテはああ…、と笑った。
「そういや言ったな、そんなこと」
「うん」
昔のことを思い出して、二人は笑いあう。
「さて、と。もう遅いし、そろそろ寝るか」
「うん」
頷き、リアラは差し出されたダンテの手に自分の手を重ねた。