「俺達は半魔だ。人間でもあり、悪魔でもある。だから、どちらかに立つことはできない」
リアラを見つめ、ダンテは続ける。
「けれどその代わり、どちらの心もわかるだろ?」
「!」
リアラは目を見開く。
「どちらにも立てないけど、どちらもわかる。俺達は半魔であり、そういう位置に立ってる」
「……」
ダンテを見つめ、少し間を空けて、リアラは呟くように尋ねた。
「…そのうち…」
「ん?」
「そのうち、人間(ひと)の優しさも、人間側についた父様の気持ちも、わかりますか…?」
その言葉に一瞬ダンテは目を見開いたが、すぐに優しい笑みを浮かべた。
「わかるさ。それに、お前はもう人間(ひと)の優しさをわかってるよ」
「わかってる…?」
リアラの言葉に、ダンテは頷く。
「城におばさんの形見を探しに行って俺が怪我をした時、お前は泣いて心配してくれただろ?」
「でも、あれは私のせいで怪我をさせたからで…」
リアラの言葉を遮るように、ダンテは指を指して言った。
「それだ。その考えが、人間(ひと)の優しさなんだ」
「これが…?」
「ああ。自分のせいで怪我をさせたなんて、悪魔は考えねえだろ?」
「確かに…」
リアラは頷く。本能のままに動く悪魔には、考えもつかないものだろう。
「お前が自分でわかってないだけさ。俺からは、充分人間(ひと)に見えるよ」
「お兄ちゃん…」
ああ、この人は何でこんなに優しいのだろう。この人の言葉は、何でこんなに深く心に染み込むのだろう。
心の澱みが消えてなくなっていく。
そう思うと、自然と笑っていて。
「…ありがとう」
リアラは感謝の言葉を口にしていた。
それに微笑み返して、「あのな、」とダンテは口を開く。