ダンテの右手の上にあったのは、先程カットラスに壊される前に拾い上げたもう片方の髪留めだった。
髪留めをじっと見つめるリアラに、ダンテは笑いかけ、言った。
「また落としたりしないようにつけてやるよ」
だからもう片方も貸してくれ、と言われ、リアラはなくさないように自分の指にはめていた片方の髪留めをダンテに差し出す。リアラから髪留めを受け取ると、その場に屈みこみ、優しい手つきでダンテは彼女の髪を一房手に取った。そして丁寧に髪留めを通してやると、そのまま反対側の髪も一房手に取り、同じく髪留めを通してやる。少し髪を整えてやってからダンテが手を離すと、リアラの両頬で乳白色の髪留めがキラリと光った。それを見て、ダンテは満足そうに微笑む。
「ああ、よく似合ってる」
言われたリアラも顔を赤く染めながらも、嬉しそうに微笑む。
「ありがとう、お兄ちゃん」
お礼の言葉を述べるリアラの頭を撫でると、ダンテは彼女を抱き上げ、立ち上がった。
「さて、と。明るくなる前に帰るか」
「うん」
自分の胸に顔を寄せて甘えるリアラの頭を再び撫でてから、ダンテは部屋を後にした。
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2013.2.23