静かになった部屋の中、ダンテはリベリオンを背に担ぐと、リアラの方を振り返った。
「リアラ、大丈…っ!」
リアラに怪我がないか確かめようと声をかけた時、ダンテが言葉を言い終わる前に、リアラがダンテに抱きついてきた。リアラはダンテのコートを掴み、小さく震えている。
「リアラ…?」
突然のことにダンテが戸惑っていると、リアラが顔を上げた。彼女の大きな瞳には涙が溜まっている。
「お兄ちゃん、腕は、腕は…?」
大丈夫…?と震える声で尋ねられ、ダンテは目を見開く。
リアラは必死に背伸びしてダンテの右腕に手を伸ばすと、自分の手が血塗れになるのも構わず、ダンテの腕をぎゅっと握り締める。そのままボロボロと涙を溢すリアラを見て、ダンテは情けない気持ちになった。
(心配、させちまったな…)
自分は半魔だから、怪我を負ってもすぐに治るのは同じ半魔の彼女もわかっていることだろう。それでも、自分のせいで怪我をさせてしまったと彼女は己を責めているのかもしれない。
ダンテがそう考えていると、ふいに布の裂ける音が聞こえた。視線を下げると、リアラが自分の服の袖を裂き、自分の右腕に当てていた。
もう傷口は塞がっているのにそうする彼女に、ダンテは思わず苦笑した。
「もう傷口は塞がってるから大丈夫だ。心配するな」
リアラの頭を撫でながらダンテが言うと、リアラは未だに涙の溜まった瞳でダンテを見上げる。彼女の目元に溜まった涙を左手で掬いとってやると、ダンテは自分の右腕に当てられている布を指差して言う。
「これ、使っていいか?」
リアラが頷き、手を避けてから、ダンテはすでに血に濡れたその布を手に取ると、しゃがんだ。
リアラの血に濡れた手を拭う。続いて血に濡れた右手のグローブを外し、自分の右腕についた血を拭うと、コートの右ポケットに手を突っ込む。リアラが不思議そうにその様子を眺めていると、ダンテは右手をポケットから出し、リアラの前でその手を広げてみせた。
思わずリアラは声を上げる。
「あ…」