斬り、突き刺し、また斬る。
まるで荒れ狂う風のようにダンテは悪魔を屠っていく。
いくら数が多いとはいえ、リアラの魔力を消費しないように戦っていた前回とは違い、今回は存分に力を振るえるため、こんな数はどうってことない。
次々と悪魔を薙ぎ倒す中、ダンテはあることに気づいた。


(こいつ等…人間を喰ってるな)


悪魔達から微かにする人間(ひと)の血の匂い。 覚えのある匂い。
ちらりとダンテは試験菅の側にあるあの血溜まりを見る。
息を吸い、ダンテは確信する。


(やっぱりな…。こいつ等、シスを喰ってやがる)


悪魔達からする血の匂いと血溜まりに残る匂い。 どちらも同じ匂いだった。
おそらく、自分がリアラを救出し、城を出たあの後、ここにいる悪魔達がシスの死体を喰らったのだろう。


(だから、悪魔達の目が異様にギラついてたってわけか)


ダンテは再び、悪魔に目を向ける。
目の前の悪魔達は、他の悪魔達よりも異様にギラついた目でダンテを見ている。まるで、目の前のダンテを喰らおうとしているかのようだ。


(こりゃ、気を引き締めた方がよさそうだな…)


自分だけならまだしも、今この場にはリアラもいる。彼女に怪我をさせるわけにはいかない。
気を引き締め直すと、ダンテはリベリオンを振り上げた。
悪魔と戦闘を始めて数十分、ダンテの圧倒的な力により、部屋を埋め尽くすほどいた悪魔は三体しか残っていなかった。
くるりとリベリオンを一回転させて、ダンテは呟く。


「あっけねぇな…」


まあ遊んでもいられないし、さっさと終わらすか、と言い、ダンテがグラディウスを一体倒した時だった。
カットラスが地中に身を沈めた。そこまでは大して焦ることもなかったのだが。


(…やべぇ!)


次の瞬間、ダンテは顔色を変えた。
カットラスが顔を出そうとしているその場所は、ちょうどリアラの髪留めが落ちているところだった。そのことにリアラも気づいたのか、ダンテの後ろから息を詰めたような声が漏れた。


「あ…!」


床の色が変わっていく。もうだめだ、とリアラが目を閉じた、その時。


「ぐっ…!」


ダンテの呻く声が聞こえ、リアラが目を開けると、


「…お兄ちゃん!」


とっさに髪留めのある場に駆け寄ったダンテがカットラスに壊されるギリギリ前に髪留めを拾い上げていた。
だが、次の瞬間床から現れたカットラスに腕を切り裂かれ、ダンテの右腕からはおびただしい量の血が流れていた。
リアラの悲鳴のような自分を呼ぶ声に、ダンテはリアラの方を振り向き、ニッと笑ってみせた。


「大丈夫だから、心配するな」


もう少しで終わるから待ってろ、と言うと、ダンテは未だ血の流れる右手でリベリオンを持ち直し、自分に向かってくるカットラスを床から引きずり出し切り払うと、残ったグラディウスに向かって跳躍し、リベリオンを突き刺した。
悲鳴を上げながらグラディウスが砂になって崩れ落ちると、部屋に静寂が下りた。




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