魔剣の間に着いた二人は、辺りを見回す。今のところ、悪魔はいないようだ。
ふいに、リアラが顔をしかめた。
「どうした?」
「血の匂いがする…」
リアラの言葉に、ダンテは空気を吸い込む。リアラの言う通り、微かに血の匂いがする。
自分も鼻は効く方だが、リアラの場合は魔狼の血をひいているため、自分よりも鼻が効くのだろう。
「………」
リアラを見やると、リアラはあるところをじっと見ていた。彼女の視線の先を追うと、そこは試験管の残骸―彼女が実験台として閉じ込められていた場所だった。そのすぐ側には、乾いて赤黒くなった血溜まり。
(…なるほどな)
ダンテはすぐに納得した。その血溜まりはシス― リアラを使い、悪魔を造る実験をしていた男が悪魔にやられ、死んだ時にできたもの。
ダンテはリアラに視線を戻す。彼女もその血溜まりを作ったのが誰かわかっているのだろう、先程より一層不快そうにしている。
宥めるように、ダンテはリアラに声をかける。
「あまり長居したくないよな。さっさと探してここを出よう」
「…うん」
リアラはこくり、と小さく頷いた。