部屋に着くと、ダンテはリアラにベッドに座るように促す。それに従い、リアラがベッドにぽすんと音を立てて座ると、ダンテは隣りに腰を下ろした。
ダンテは隣りで足をぱたぱたとばたつかせるリアラを見やる。魔力が戻り始めたためか、今は7、8歳くらいの姿をしている彼女。
ふと、ばたつかせていた足の動きを止め、リアラが口を開いた。
「…やっぱり、あの時の父様と私の話、聞いてたんですね」
先程の会話で気づいたのだろう。ダンテは頷く。
「ああ。あの時、話してる内容はよくわからなかったが、後でゼクスに聞いてわかった」
「そうですか…」
リアラが呟く。その間もずっと俯いたままだ。ダンテは尋ねる。
「城で大切な物をなくしたって聞いたが」
「…はい。すごく、大切な物です」
そう言い、リアラは手を握り締める。
「何をなくしたんだ?」
「…髪留め、です」
ダンテに問われ、リアラはぽつりと答える。
リアラの言葉を聞いて、そういえば…とダンテはあることを思い出す。
「髪留めって、ここらの髪を留めてた白っぽいリングのことか?」
自分の頬にかかる髪を持ち上げて示すと、リアラは頷く。
「はい。いつ落としたかはわからないんですけど…」
そう言い、リアラは黙る。
そんなリアラを横目に見ながら、ダンテは記憶を辿り始める。
確か、リアラを見つけた時にはまだ髪留めをつけていた。魔力を使って、壊れた氷の中から崩れ落ちてきた時もつけていたから…
「…氷の中から出てきた拍子に落としちまったのかもな」
ダンテの言葉にリアラは顔を上げたが、すぐに俯いてしまう。
「やっぱり、城で落としたんですね…」
ため息混じりに言ったリアラは、少し黙った後に小さく呟いた。
「見つからないかもしれないな…」