夕食を食べ終えたダンテは部屋のベッドに身体を横たえていた。
寝返りをうち、ダンテは呟く。
「…暇だな」
ここに来てから、ほとんど外に出ていないし、悪魔を狩ることもしていない。
平和なのは悪くないが、自分には退屈すぎる。やはり自分には、いつもの危険と隣り合わせなスリリングで刺激のある生活が合う。
(もう少しリアラの様子を見て、落ち着いたところで戻るか)
そう思い、することもないしもう寝てしまおうかと目を閉じた時だった。
トテトテトテ…
部屋の外から小さな足音がして、ダンテは目を開ける。
「…」
しばらく考えた後、ベッドから起き上がり、ダンテは部屋を出る。
廊下に出たダンテは先程の足音が向かった方へと歩く。しばらく歩いていると、視線の先に玄関の前に佇む小さな影を見つけた。
サラサラとしたアイスブルーの髪に長袖の白いワンピース―リアラだった。
「…」
リアラは黙ったまま扉を見つめている。何かを考えているようだ。
そして、何かを決めたのか扉に手を伸ばした。
「リアラ」
その様子を見て、リアラのやろうとしていることに見当をつけたダンテは少女の名を呼んだ。
「っ!」
びくり、と肩を震わせ、リアラはダンテの方を振り向く。
そして自分の名を呼んだ人の姿を認めると、ゆっくりと口を開いた。
「お兄ちゃん…」
「外に出る気か?ゼクスに言われたばかりだろ?」
リアラに近づきながらダンテは言う。
リアラはふるふると首を振る。
「ううん、外の様子を見ようと思って…」
「出る気はなかったのか?」
ダンテが問うと、リアラはきゅっと口を結び、俯いた。
そして、途切れ途切れに呟く。
「…出たい…けど…」
その様子を見たダンテは顎に手をやり、しばらく何か思案すると、
「ちょっと俺の部屋に来ないか?」
と言った。
「お兄ちゃんの、部屋に?」
「ああ」
リアラは口に手をあて、しばらく考えるそぶりをしていたが、やがて小さく頷いた。
「…ん」
「決まりだな」
そう言って笑うと、ダンテは屈みこみ、リアラに手を差し出した。リアラは視線をさ迷わせたが、すぐにダンテの手に自分の手を乗せる。
それを確認すると、ダンテは彼女の手を優しく握り、廊下を歩きだした。