「お兄ちゃん…」
「よう」
リアラの呟きに、ダンテは軽く手を挙げて答える。
「あ、えっと…」
目を伏せ、困ったように言葉を探すリアラに、先程の様子を見ていたダンテはわざと話題を逸らして話しかける。
「ちょうどよかった、お前を探してたんだ。悪いが、腹がへっちまってな、夕食の支度を頼みたいんだが…」
「夕食…」
呟き、リアラは部屋の時計を見やる。時計は7時ちょっと過ぎを指している。
「もうこんな時間だったんだ…。ごめんなさい、すぐに用意しますね」
「そんなに急がなくていいさ、準備ができたら教えてくれるか?」
「はい」
頷き、リアラは廊下を小走りで駆けていく。
その姿を見送ってから、 ダンテは部屋に足を踏み入れた。
部屋の中では、ゼクスが椅子に座って大きなため息をついていた。
「大丈夫か?」
「ダンテか…」
ダンテに気づき、ゼクスは顔を上げる。だいぶ疲れたといった表情だ。
「一体どうしたんだ?」
お前が声を荒げるなんて珍しいな、と言い、ダンテはゼクスの向かいにあった大きなソファーに腰を下ろす。
「少し…な」
困ったような顔をしてゼクスは答える。
その言葉に間髪入れず、ダンテは言葉を返す。
「少し、って感じじゃねえだろ。すごい剣幕だったぞ」
「…見ていたのか」
「ああ」
普段ならすぐに気配に気づけたであろう彼が気づかなかったとは。
裏を返せば、それほどリアラとの言い争いに意識が集中していたということか。
ゼクスは一つため息をついてから、口を開いた。