「ダンテさん?」
「リアラに、大事な話があるんだ。…聞いてくれるか?」
「…はい」
頷くリアラから一旦身体を離すと、ダンテはベッドの縁に腰かける。そして、真っ直ぐにリアラを見つめた。
「今回のことでな、お前がどれだけ大切な存在か、わかったんだ」
「ダンテさん…?」
「いつの間にか、お前がここにいることが当たり前になってて…それが日常になってた。この穏やかな時間が当たり前のことじゃないのは、よくわかってたはずなのに」
「……」
「お前が死ぬかもしれないって思った時に、また大切なものを失うかもしれないと思った。怖かった。その時に、ようやく気づいたんだ。…お前が、俺の中で大きな存在になってるってことに」
「…っ」
息を飲むリアラに、ダンテは微笑みかける。
「レディに預けたっていう、俺宛ての花…あれには意味があるんだろ?幸せになれっていう意味が」
「!」
リアラは目を見開く。
「気づいてた、んですか」
「ピンクの薔薇を見て、な。お前はああいう色は好まないから、珍しいと思ったんだ。花言葉に関係するんじゃないかって思って、お前の部屋に行って本を見て…やっと、理解した。…本当、お前は他人(ひと)のことばかり心配するな」
「……」
「…なあ、リアラ」
俯くリアラに、ダンテは優しく語りかける。
「そうやって他人(ひと)のことを心配するのは、お前のいいところだ。…けどな、たまには自分のことを考えろ。俺は、お前の方が心配だよ」
「ダンテ、さん…」
「前に、お前は未来のことなんて考えてないって言ったよな。…おばさんの仇を討ったんだ、もう、自分のことを考えてもいいだろう?自分の幸せを、考えてもいいだろう?お前が幸せになったって、責める奴は誰もいないさ」
すっと手を伸ばしてリアラの身体を自分の方へと引き寄せると、想いを込めて、ダンテは告げる。
「幸せだと思ってもらえるかはわからない。…けど、これからは俺が守る。だから、傍にいてくれないか。…好きだ、リアラ」
「…っ!」
ポロリと、リアラの目から涙が零れ落ちる。震える手で服を掴み、胸に顔を埋めるリアラに、ダンテの顔が歪む。
「…嫌、だったか?」
「…っ、違うんです、そうじゃなくて…」
ふるふると首を振ると、ごしごしと手で流れる涙を拭い、リアラは顔を上げる。膝立ちになってダンテの肩に手をかけ、彼の耳元に顔を寄せると、リアラはそっと想いを告げる。
「私も、ダンテさんのことが好きです。…ダンテさんの傍にいることを、私の生きる理由にしていいですか?」
「!」
耳元で告げられた想いに、ダンテは目を見開く。ゆっくりと身体を離したリアラは、柔らかな笑みを浮かべてこちらを見ていて。
ダンテはリアラを強く抱きしめる。
「…好きだ、リアラ」
「私もです、ダンテさん…」
お互いに、好きだという想いを伝えて。見つめ合う二人の距離は、自然と縮まる。
柔らかな月の光が、二人を優しく照らしていた。
***
2015.1.11