「あ…」
見覚えのある影に、リアラは目を見開く。
一つは、美しい金髪に碧眼の女性。肩には、赤いストールをかけている。
もう一つは、銀髪にアイスブルーの目をした男性。中世のような紫の服に身を包んだその人は、女性に寄り添うように立っている。
そして、もう一つ。男性と同じ銀髪にアイスブルーの目をした青年。青いコートを着たその人は、どこかダンテと似ていて。
金髪の女性がゆっくりと歩み寄ってくる。
「初めまして」
「おば、様…?」
「おば様って呼んでくれるのね、嬉しいわ」
そう言って笑う女性は、事務所の事務机に飾られた、あの写真の女性と全く同じだった。ーダンテの母・エヴァだ。
エヴァはフィーリアに微笑みかける。
「あなたによく似てるわね、フィーリア。顔立ちがそっくり」
「性格はあの人によく似てるのよ。真面目なところがそっくり。バージルとダンテは、スパーダさんによく似たわね」
「ふふ、そうね」
目の前で交わされる会話に、リアラは目を瞬かせる。目の前の光景が、まるで夢のようだったから。
エヴァは後ろにいる男性ースパーダの方を振り向く。
「ねえ、あなたもこっちに来たら?」
エヴァの呼びかけに、スパーダは微笑んだまま首を振る。
「私はいいよ、ここからでも充分顔が見える。それに、そろそろその子を返してやらないと」
「そうね…あの子が悲しむわね」
頷くと、エヴァは再びリアラに視線を移し、リアラの手を取る。
「あの子を、よろしくね。寂しがり屋な子だから」
「…私で、いいんですか?」
「あなただからいいのよ」
微笑んで言うエヴァに、リアラも微笑んで頷く。
「…はい」
エヴァは笑みを深めると、青年の方を振り返る。つられてリアラも青年を見つめる。
「……」
「……」
少しの間、二人の間に沈黙が落ちる。何かを考えるようにリアラを見つめていた青年ーバージルは、ゆっくりとリアラに歩み寄った。
手を伸ばせば届く距離で立ち止まり、バージルはゆっくりと口を開く。