眩しかった光が落ち着き、リアラが閉じていた目を開けると、辺り一面真っ白な世界にいた。空も、地面も、全て白い。
「……」
今度は、どこに来たんだろう。天国?まさか。自分は、神など信じていない。
そんなことを考えていたリアラは、いつの間にか身体が動くようになっていることに気づく。
「あ…」
思わず、声が零れる。手を握ったり、開いたりしてみる。感覚も、ちゃんとある。
(どうすれば、いいのかな…)
とにかく、歩いてみるのが一番だろうか。そう考え、リアラが立ち上がった時、顔を上げた先に何かの影が見えた。それは、こちらに近づいてくる。
やがて見えたその姿に、リアラは目を見開いた。
「あ…」
それは、一人の女性だった。焦げ茶の長い髪を緩くみつあみにし、黄色い花の髪飾りでまとめている。白いタートルネックに深緑のロングスカートを履いた彼女は、優しい笑みをこちらに向けている。細められたその目は、森を思わせる深緑。
忘れるはずがない、あの人は…。
「母、様…」
リアラの呟きに、女性ーフィーリアの笑みが深くなる。
「久しぶりね、リアラ。元気にしていた?」
「どう、して…」
言葉が出ないリアラに、フィーリアはゆっくりと話し始める。
「ここは、あの世とこの世の境目。あなたは今、生と死の境を彷徨っているの」
「あの世とこの世の、境目…」
「…ねえ、リアラ。生きるのは、辛い?」
悲しげな顔をして尋ねるフィーリアの言葉に、苦しそうに顔を歪め、リアラは俯く。
「…だって、私は…母様を、守れなかった。母様の命を犠牲にして、私は生きてる。それに、何の意味があるの?」
「……」
「…わかってるよ、最後まで母様が私を守ろうとしてくれたのも、仇を討ったって、母様が喜ばないことも。…でも、私には、これしかなかった」
「…リアラ…」
「ごめんなさい母様、守れなくて、ごめんなさい…」
胸を締めつけるような後悔の念に、リアラの目からはボロボロと涙が零れ落ちる。止まらない涙に、リアラが両手で顔を覆った時、ふわりと何か温かなものに包まれた。ー母が、自分を抱きしめていた。
「!」
「馬鹿ね、そんなに自分を責めなくていいのよ。…あれは、仕方のないことだわ」
「でも…」
「私は、何も後悔していないわ。最後にあなたと過ごせたこと…とても、嬉しかった」
「…っ」
リアラの背中を宥めるように撫でながら、フィーリアは続ける。
「それに、小さい頃からあなたは私を守ろうとしてくれたじゃない。悪魔から母様を守るんだ、って、一生懸命鍛錬をして…その気持ちだけで、私は充分よ」
だからね、と諭すようにフィーリアは告げる。
「生きなさい。あなたには、傍にいてくれる大切な人達がいるでしょう?」
「母様、は…」
「私は大丈夫よ。一緒にいてくれる人達がいるから」
そう言い、後ろを向いたフィーリアにつられ、リアラが顔を上げると、少し離れたところに、いつの間にか三つの人影が立っていた。