リグレットが消えたことで身体を貫いていた爪も消え、支えを失ったリアラの身体が大きく揺らぐ。地面に崩れ落ちる直前、リアラの身体を温かな腕が支え、抱え上げた。
「リアラ!」
「ダンテ、さん…」
温かな腕に包まれ、顔を上げたリアラの目に映ったのは大切な人の姿。リアラが見上げた先で、ダンテはくしゃりと顔を歪める。
「バカ野郎、何であんな無茶した…!」
「ごめん、なさい…。でも、どうしてもあいつを倒したかったから…」
泣きそうな顔をしているダンテに手を伸ばしたかったが、力を使い果たしてしまったため、指先一つ動かせない。胸の傷も塞がらず、血はとめどなく流れ続ける。視界も段々と霞み始めた。
(ああ、もうすぐ死ぬんだな…)
母の仇を討つと決めた時から覚悟していたから、恐怖は感じない。
ただ、一つだけ後悔があるとするなら。
(ダンテさんを悲しませてしまうことだけは、後悔、してるかな)
心優しいこの人を悲しませてしまうことは、少し心苦しい。けれど、その反面、死ぬ間際に傍にいてくれたのがこの人でよかったと、そう思えて。そう思ったら、どうしても伝えたくなった。
「ダン、テさん…」
霞む目で精一杯ダンテを見つめ、リアラは告げる。
「ごめん、なさい…あり、がとう…」
涙が頬を伝うのを感じながら、リアラの意識は闇に沈んだ。
***
2014.12.22