「リアラ!」
突然響いた声に、リグレットは顔を上げる。リアラも声のする方へ顔を向けると、そこにはここにいるはずのない人物がいた。
「ダンテ、さん…」
「リアラ…!」
ぼうっとする頭で、リアラはダンテを見つめる。
リアラの気配を追い、ここに辿り着いたダンテが見たのは、黒いローブを纏った悪魔の爪に貫かれ、身体を仰け反らせたリアラの姿。彼女の胸を貫く紫の爪を血が伝い落ち、白いコートが赤く染まっていた。
突然現れた影の正体に気づくと、リグレットは楽しそうに笑う。
『スパーダの息子か…ちょうどいい、この女の魔力を吸い尽くしたら、お前のも頂こう』
「リアラを離せ!」
『それはできないな、離してほしかったら、無理矢理にでも奪い取ればいい。…できるのならな』
「っ…!」
今手を出せば、リアラは無事では済まない。どうすることもできず、ダンテは唇を噛みしめる。
その時、リアラがふ、と笑みを零した。リグレットは眉根を寄せる。
『…何がおかしい』
「あんた、ただ私が魔力を取られているだけだと思ったの?」
笑顔のままリアラは続ける。
「魔力を取られている間、私はずっと探してたのよ…あんたの弱点を、魔力の集まる場所をね」
『…っ、な…!』
目を見開くリグレットの顔ー正確には目元を覆う赤い仮面を掴み、リアラは身体を起こす。もう片方の手でリグレットの爪を掴み、起き上がっているため、背中から血がとめどなく溢れ出る。
「思い知れ、母様の痛みを…そして闇に還れ、リグレット!」
『や、止めろ、止めろぉぉぉーーっ!!!』
リグレットの叫びも虚しく、リアラの魔力が込められた氷柱が仮面ごとリグレットの頭を貫く。耳障りな叫び声を上げ、リグレットは砂になって消えていった。