一方、自室にいたリアラは椅子に座り、小さなテーブルの上で本を捲っていた。


「………」


パラ、パラ、と紙が捲られる音だけが響く。ページに色とりどりの花の写真が説明と共に載っているその本は、レディとトリッシュと一緒に出かけた時に買った花言葉の本だ。
この本を買った日、ダンテに尋ねられて似合わないでしょう、と苦笑しながら説明した自分に、ダンテはそんなことはない、と優しい笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。それが、すごく嬉しかった。


「……っ」


ふいに息が詰まり、紙を捲る手が止まる。ああ、こんな時まで。あの人のことを考えてしまうなんて。何をしても、あの人の姿がちらつく。苦しい、苦しい、苦しい。


「…っ、っ…」


本が濡れてしまわないように、目元を押さえて、声を押し殺してリアラは泣く。こんな心が乱れた状態で、母様の仇を討てるわけがないじゃないか。落ち着け、落ち着け。冷静になれ。自分がしなきゃいけないことは、何だ。母様の仇を討つことだろう。気持ちを、押し殺せ。幸せなんか、望むな。


「……」


目元を覆っていた手を外した時、リアラの目は冷たい程に澄んでいた。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -