「ただいまです、ダンテさん」
「お帰り、リアラ」
リアラが事務所に帰ると、いつものようにダンテが出迎えてくれた。だが、流れる空気はぎこちない。
「手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。それ程荷物はありませんし」
申し出をやんわりと断り、リアラはキッチンへと向かう。
紙袋から食材を出して、冷蔵庫に入れようと屈んで扉を開けて、リアラはその体勢のまま俯く。
(いつものようにしたいのに…)
いつもなら、喜んでお願いできるのに。今は、どうしても遠慮してしまう。
(やっぱり無理だ…一緒にいられない…)
早く母様の仇を討って、ここから出ないと。そう思っていたリアラは、ふいに聞こえた声にはっと我に返る。
「リアラ?」
後ろを振り返ると、キッチンの入口から身体を乗り出してダンテがこちらを見ていた。
ダンテは心配そうに言う。
「どうした?具合、悪いのか?」
「いえ、少し考えごとをしていただけですから。心配しないでください」
無理に笑顔を浮かべて答え、リアラは片づけを再開する。その後ろ姿を、ダンテは黙って見つめていた。