昼過ぎ、依頼に行っていたダンテが帰ってきた。
「ただいま、リアラ」
「おかえりなさい、ダンテさん」
事務所の扉を開けるといつものようにリアラが出迎えてくれたが、今日は何だか違和感を感じた。笑顔を浮かべてはいるが、どこかぎこちないような。
そんなダンテの様子に気づかず、リアラは続ける。
「一時間くらい前に、ネロから電話がありましたよ。近々、修行のためにそっちに行くから伝えておいてくれって。一週間くらい滞在したいそうですよ」
「修行、ねぇ…。あっちの方が依頼が多いだろうに」
「視野を広げたいんじゃないですか?あまりフォルトゥナから出ることはないだろうし」
笑って言うリアラになるほどな、と頷いた後、一呼吸置いてダンテは呼びかける。
「…リアラ」
「はい」
空気が変わったことに気づき、リアラは表情を変える。真っ直ぐな目でこちらを見るリアラに、ダンテは静かに問いかけた。
「…何かあったか?」
「!」
わずかに目を見開いたリアラに、ダンテは何かあったのだと確信する。だが、ごまかそうとしているのか、ぎこちない笑みを浮かべ、リアラは言う。
「何もありませんよ、心配しないで…」
「何もないって顔じゃないだろ」
リアラの言葉を遮り、ダンテは両手で彼女の頬を包み込む。瑠璃色の目を真っ直ぐに見つめ、ダンテは続ける。
「何もないのなら、そんなぎこちない笑顔にはならない。…一人で抱え込むな、何かあったのなら、いくらでも聞く」
促すようにダンテが告げると、何かを耐えるように目を伏せ、リアラは俯く。そして、弱々しい、小さな声で言った。
「…ご飯食べてからに、しましょう。こんな話で、ご飯を不味くしたくないです」
「…わかった」
話を整理するのに時間が必要だろうし、何より彼女の心遣いを無駄にしたくない。ポンポンとリアラの頭を軽く叩くと、ダンテは彼女の手を優しく引いた。