「着きました」


歩き始めて数分、男性が足を止めた。周りは薔薇の木に囲まれており、真ん中には噴水がある。
周りを見渡し、リアラは口を開く。


「静かですてきなところですね」

「いいところでしょう?それに、何より誰にも邪魔されず、二人きりになれる」


そう言う男性の唇が歪な笑みを浮かべる。はぁ、とため息をつくと、リアラは腕を組む。


「正体はわかってるのよ。さっさと姿を現しなさい」

『…さすがはあのゼクスの娘だ、気づいていたか』


声質が変わったかと思うと、男の姿が闇に包まれて変化する。
金髪はそのままに肌は病的なまでに青白くなり、中世のような服を着ていた。背には黒い蝙蝠の羽根を携え、開いた口から鋭い牙が覗く。
男ー悪魔の言葉に、リアラは眉間に皺を寄せる。


「最初から、私のことを知ってたってことね。狩られることをわかっててわざわざ二人っきりになるなんて…物好きな奴」

『興味はあったのでね。会場を見た時にお前とスパーダの息子を見つけたが…まさか、こんなところに来るとはな』


ふいに、悪魔が目を細める。


『…それにしても美しい。まさかこれ程とはな。…うまそうだ』

「っ!?」


悪魔の姿が消えたかと思うと目の前に現れ、リアラは目を見開く。その隙を突き、悪魔はリアラの首筋に牙を突き立てた。


「…っ!」


ズル、と血を吸う音が大きく響き、驚きに固まるリアラの首筋から口を離すと、悪魔は傷口をベロリと舐めあげる。


『…うまい。今まで食べた中で最高の味だ』

「…っ、離せ!」


リアラが腕を振り上げると、悪魔は容易く身を離す。それと同時にピリッ、と軽く電流が走ったように身体が痺れ、力が入らなくなってきた。


「…っ、何をしたの!」

『効いてきたか?私の毒は即効性でな、普通の人間なら立っていることさえままならない。…だが、さすがは半魔といったところか。立ったまま、なおかつ身体を動かせるとはな』


だが、と悪魔は笑みを浮かべる。


『自由には動かせまい。動きが鈍っているその間に、全ての血を頂くとしようか』


そう告げると、悪魔はリアラに向かってものすごいスピードで近づく。悔しさに唇を噛み締め、何とか反撃しようとリアラが手を掲げた、その時。




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