「けっこう長かったな」
「でも、あっという間でした。慣れると楽しいですね」
「そうか、楽しかったか」
「はい」
優しい笑みを浮かべるダンテに柔らかな笑みを返し、リアラは頷く。
ダンスの時間が終わり、招待客は各々シャンパングラスを片手に話を楽しんでいた。リアラとダンテも壁に寄りかかり、仕事に差し支えがない程度にシャンパンを飲みながら話をしている。
「とはいえ、緊張でちょっと疲れました。ちょっと、外の空気を吸いに行ってきますね」
「ああ、行ってこい」
ひらひらと手を振るダンテに見送られ、リアラは会場を後にする。
庭に面する通路の柱に寄りかかると、リアラは息をつく。
「ふう…」
何気なく見上げた空には、数多の星が光り輝いている。夜空を見つめたまま、リアラは思う。
(まさか、レディの期待してた通りになるなんてね…)
進展どころか、それ以上のことになっているような気がするけれど。ダンテの事務所にやってきて二ヶ月、まさかこんなことになるとは、あの頃の自分は想像もしていなかっただろう。
(でも…後悔はない、かな)
むしろ、この温かな気持ちを知れたことを嬉しく思う。きっと、彼に会わなければ、一生知ることはなかっただろう。
(告白する気はないけれど…傍にいることくらいは、許されるかな)
代わりに、できることは精一杯するから。今まで与えてもらったものへの恩返しを、したいから。
リアラが静かに目を閉じたその時、ふいに声が響いた。