「前に教えた姿勢は覚えてるな?後は俺がリードするから、俺と同じように動けばいい」
「は、はい」
ダンテが頷くリアラの腰にそっと手を回すと、リアラも控えめにダンテの腰に手を添える。繋がれた手を掲げると、二人は踊り始めた。
「次はこっちだ。…そうそう、上手いぞ」
周りに聞こえないよう、小さな声でダンテはリアラを導く。始めはぎこちなく動いていた彼女も、要領がいいのか数分もしたら滑らかな動きを見せるようになっていた。
「飲み込みが早いな」
「本当、ですか?」
「ああ」
「…よかったです」
ほっと、リアラは安堵の息をつく。ダンテも優しい笑みを浮かべると、顔を近づけてそっと囁く。
「緊張、少しは解れてきたみたいだな。仕事とはいえ、こういう時くらいは肩の力を抜いた方がいいぞ」
「ダンテさん…」
「仕事に真面目なのはいいことだけどな、どこでもかんでも力を入れてたら、いつか疲れちまう。たまには肩の力を抜く時間を作らないとな」
あと、こういうことを楽しめる余裕を持つといい、と付け加えるダンテに、リアラはくすりと笑みを零す。
「…ダンテさんくらいに、余裕を持てるといいんですけどね」
「俺みたいにならなくてもいいさ。リアラなりのやり方を見つければいい」
「…はい」
ああ、心が温かい。この人の優しさは、心の奥底に沁みていく。
いつも、支えてくれて。いつも、傍に寄り添ってくれて。家族としてだけではなく、一人の女性として見てくれている。接してくれている。
今まで感じたことのなかった、温もり。ずっとこうしていたい、傍に、いたい。
(…あ…)
ふいに何かがすとんと心に落ちた気がして、リアラは納得する。
…ああ、やっと気づいた。家族といる時とは違う、この気持ち。
…私は、ダンテさんが好きなんだ。
「リアラ?どうかしたか?」
「…いえ、何でもないです」
なら、この気持ちを大切にしよう。この時間を、大切にしよう。
繋いだ手に少しだけ力を込めて、リアラは踊り続けた。