「…ダンテさんも、その姿、すてきだと思います。かっこいいです」
ダンテは黒いタキシードを着ていた。白いワイシャツに赤いアスコットタイを合わせ、タキシードのポケットに折り畳まれて入った赤いスカーフが胸元を飾っている。前髪をワックスで上げており、普段とは違う雰囲気だった。
リアラの言葉に、ダンテは目を細めて笑う。
「そうか、ありがとな」
思わず頭を撫でてしまいそうになったが、子供扱いしているように見えてこの場に似つかわしくないだろうと止めた。
ふいに彼女の首にかけられていたネックレスに気づき、ダンテは尋ねる。
「それ、ネックレスにしてきたのか」
リアラが首にかけている細い銀の鎖の先には、いつも髪留めに使われている乳白色のリングが二つ。
胸元に手をやり、リアラは苦笑する。
「どうしても、置いていけなくて。ドレスに合わない、ですよね」
「そんなことない、よく合ってる。心配しなくても大丈夫だ」
「…ありがとうございます」
ダンテの気遣いが嬉しく、リアラは微笑む。
その時、屋敷の主である依頼主の声が会場に響いた。
『皆様、お待たせ致しました。いよいよダンスの時間でございます。オーケストラの演奏に合わせて、各々自由にダンスをお楽しみください』
その言葉に合わせて、オーケストラの前に立つ指揮者がタクトを振る。幾つもの楽器の音が辺りを満たし始め、それにつられて招待客達が自分のパートナーと踊り出した中、ダンテはリアラの目線に合わせて屈み、恭しく手を差し出す。
「じゃあ、俺達も行くか。私と踊って頂けますか、お嬢さん?」
「は、はい」
かしこまって誘いの言葉をかけてくるダンテに頷き、リアラは差し出された手に自分の手を重ねる。重ねられた手を優しく握ると、ダンテは彼女の手にキスをする。
「っ!」
「じゃあ、行くか」
顔を真っ赤に染めたリアラの手を引いて、ダンテは会場の中央へと移動する。
「ダ、ダンテさん、そんなに真ん中に行かなくても…!」
「いいだろ、誰も気にしないさ」
さらっと言ってのけ、ようやく足を止めるとダンテはリアラの方を振り向く。