空が夜の帳に覆われた頃、屋敷に明かりが灯り、パーティーが始まった。広い会場は煌びやかなシャンデリアに照らされ、テーブルには豪華な食事が並んでいる。そして、そのテーブルを囲むようにシャンパングラスを片手に招待客達が談笑している。
そんな中、パートナーを待つ影が一つ。
「まだ来てないか…」
壁に寄りかかり、グラスを揺らしながらダンテは呟く。
悩むのは性に合わないので、直感でさっさと衣装を決めたダンテは、パーティーが始まると共に会場に入った。ウエイターから受け取ったシャンパンを飲みながら会場を見回しているが、リアラの姿は見当たらない。
(あいつ、こういうパーティーに参加するのは初めてらしいし…衣装に悩んでるのかもしれねえな)
女の支度には時間がかかるものだし、それほど急ぐこともないだろう、そう思ってグラスに口をつけた、その時だった。
「おい、あれ…」
「美人だな…誰のパートナーだ?」
近くにいた数人の男性客が声を上げる。どんな美人がやってきたのかと顔を上げたダンテは、視線の先に現れた人物に息を飲んだ。
「………」
会場に入ってきたのは、待ち人であるリアラだった。彼女は静かに、控えめに歩みを進める。
リアラはシンプルな空色のドレスを着ていた。片側だけ肩紐の付いたそれはすらっとしたシルエットで、レースやリボンなどの装飾品は一切ないが、それが彼女のスタイルの良さを際立たせている。ドレスと同じ色のヒールを履き、手には短めの白いレースの手袋を付けている。高く結い上げられた髪は胸元を飾るコサージュと同じ赤い薔薇の付いた髪飾りでまとめられており、白い項が覗く。顔には薄く化粧を施しており、普段より美しく、大人びて見えた。
キョロキョロと辺りを見回すリアラは、ダンテの姿を見つけるとほっとした顔で駆け寄ってきた。
「ダンテさん!」
ダンテの前で立ち止まったリアラは、彼の様子に首を傾げる。
「ダンテさん?」
「ああいや、その…」
困ったように目を逸らし、チラリとリアラを見やると、ダンテは口を開く。
「…きれいだと、思ってな。思わず見惚れちまった」
「えっ、あ…。ありがとう、ございます…」
ポリポリと頬を掻くダンテの言葉に、リアラはみるみる内に顔を真っ赤に染める。
チラリとダンテを見上げ、リアラも口を開く。