「あの、ダンテさん」
「ん?どうした?」
夕食を終え、ソファでくつろいでいたダンテはリアラの呼びかけに振り返る。カチャカチャと食器を洗いながら、リアラはポツリと呟く。
「ダンスの練習って、しなきゃいけないですか?」
リアラの言葉に、ダンテは目をパチクリとさせる。考えながら話しているのか、まるで独り言のようにリアラは続ける。
「しなきゃだめ、ですよね。ダンスパーティーだもの、踊れなきゃだめだし…ああでも、ダンスって種類があるし…」
どうしよう…、と唸る彼女がかわいらしく、ダンテは小さく吹き出す。
ソファから立ち上がると、ダンテはリアラへと近づく。目の前にできた影に気づき、リアラは後ろを振り返る。
「ダンテさん?」
「そんなに心配なら、今から練習するか?」
楽しそうに笑みを浮かべて言うと、ダンテは考えごとをしていて止まってしまっていたリアラの手から皿を取り上げ、籠の中に置く。そのままリアラの身体を反転させると、彼女を真っ直ぐに見つめる。突然のダンテの行動に、リアラは目を見開き、顔を真っ赤に染める。
「ダ、ダンテさん、私の手、水浸しだから、ダンテさんの手も濡れちゃいますよ!」
「その内乾くからいいだろ。で、踊る時の姿勢だが…」
構わずに話を進めるダンテは、左手をリアラの右手に絡め、右手を彼女の腰に回す。
「っ!」
「基本はこんな感じだ。で、お互いに動きを合わせてステップ踏んだり、回ったり…それだけできりゃいい。まあ、こういうのは男がリードするもんだから、俺の動きに合わせてれば大丈夫だ」
一通り説明したダンテは、真っ赤に染まったリアラの顔を見て苦笑する。
「とりあえずは、すぐに顔真っ赤になるのをどうにかしないとな。パートナーがこんなんじゃ、怪しまれちまう」
「う゛…が、がんばります…」
言葉に詰まりながら答えるリアラに、ダンテはくすりと笑みを浮かべた。