「ただいまです、ダンテさん」
「おう、お帰り、リアラ」
夕方、二人と別れ、帰路についたリアラは事務所の扉を開けた。すぐに気づいたダンテが迎えの言葉とともに出迎えてくれる。
「楽しかったか?」
「はい、とても楽しかったです。珍しくたくさん服を買ってしまって…」
苦笑しながら、リアラは持っていた紙袋を掲げて見せる。そうか、とダンテは優しく笑う。
「たまにはいいだろ、お前は遠慮しすぎだ」
ぽんぽんと頭を撫でられ、リアラは照れくさそうに返す。
「そう、ですか?」
「ああ。自分で稼いでる金なんだから、好きに使っていいんだぞ?」
「…はい」
こくりと頷くと、何かを思い出したのか、あ、とリアラは声を上げる。
「そうだ、お土産に苺のロールケーキ買ってきたんです、ご飯の後に食べましょう」
そう言って、リアラは反対の手に持っていた白い箱をダンテに差し出す。
紅茶の店を出た時、ふと見た先にお菓子を売っている店があり、おいしそうな苺のロールケーキが置いてあった。せっかくだからダンテへのお土産に買っていこうと思い、二人に頼んでその店に寄らせてもらったのだ。レディにはダンテのことばかり考えてるわね、とからかわれてしまったけれど。
目の前に差し出されたケーキの箱に、ダンテは目を瞬かせる。
「…俺にか?」
「はい。…いらなかったですか?」
「いや…お前は本当に他の奴のことばかり考えるな」
苦笑しながら、ダンテはくしゃくしゃとリアラの頭を掻き回す。不思議そうな顔をしている彼女の手から箱を受け取ると、ダンテは歩き出す。
「じゃあ、ありがたく頂くよ。晩飯、ピザでいいか?」
「え、私作りますよ」
「今日くらいはいいだろ、ゆっくりしとけ。たまにはこんな時間があってもいいだろ」
「…はい」
柔らかく微笑み、リアラはダンテの後に続いた。
***
2014.10.22