「ねえリアラ、ダンテのことをどう思ってるの?」
「…へ?」
ガトーショコラを口にしていたリアラは、レディの言葉に手を止める。
一通り見たい店を回った三人はトリッシュおすすめの喫茶店でお茶の時間を楽しんでいた。三人とも紅茶とケーキのセットを頼んでおり、レディはフルーツタルト、トリッシュはミルフィーユだ。
「だって、あの事務所に住み始めてもう二ヶ月よ。毎日あいつと過ごしてて、何か感じたりしないの?」
「そうね、それは私も思ってたわ。ねえ、どうなのリアラ?」
「どうって…」
困ったように口籠り、リアラは考える。
「ダンテさんは家族で、お兄ちゃんみたいな存在で…それ以上のことなんてないよ」
「でも、男と女、二人で一緒に暮らしてるのよ。何か思うことはあるでしょう?」
「確かに、家族だからってこんなに優しくしてくれるのかな、って思うことはあるけど…」
一週間前の満月の時も、そうだ。苦しかったら言え、と、自分でも魔力を受け取ることはできるから、と。
「優しい、ねぇ…あいつが優しいなんて、私達には考えもつかないけど」
「まあ、いつもあの姿を見てるんじゃね」
腕を組み、思案するレディに、肩を竦めるトリッシュ。少し戸惑いつつ、リアラは尋ねる。
「でも、何でそんなことを聞くの?」
「ちょっとした興味よ。二人で暮らしてるんだから、何かしら進展はないのかと思ってね」
「進展?」
「そう、進展」
にっこりと笑い、レディは続ける。
「家族同然とはいえ、こんなかわいい子が一緒に住んでるんだもの、何かしら手は出しそうだけど」
「かっ、かわいい!?」
「そうよ、あなたとてもかわいいわ。ちょっと自覚した方がいいわよ」
レディの言葉に顔を真っ赤に染めるリアラに対し、うんうんと頷くトリッシュ。え、どこが?私のどこがかわいいの?と混乱するリアラを他所に、二人は話を続ける。
「なのに、まるでそういう気配がないのよね…手を出す気がない、ってことかしら」
「それくらい、家族として大事にしてるってことかもしれないわよ」
「あ、あの、二人とも、ちょっと待って」
未だ混乱でぐちゃぐちゃになっている頭の中を必死に整理しながら、リアラは言う。
「つまり、私とダンテさんが、お互いを異性として見ているか、ってこと?」
「まあ、そうなるかしら」
頷くレディに、リアラは大きなため息をつく。