「ついたくさん買っちゃったなあ」
「あら、そう?少ないと思うけど」
「そうよ、私達に比べれば少ないわよ」
「レディとトリッシュが多いんだよ、そんなにたくさん買うなんてびっくりしちゃった」
「私達はこれで普通なんだけど」
「滅多に買い物なんかしないし、これくらい買うわよ」
「そうなんだ…」
とりとめもない会話を交わしながら、三人は商店街を歩く。
レディとトリッシュに連れられいくつかの店を回ったリアラは季節の変わり目ということもあり、珍しく紙袋二つ分の服を買った。普段に比べれば多い方なのだが、レディとトリッシュからしたら少ないという。そう言う二人の両手には紙袋が二、三つずつあって、自分の倍はある。
私の方が珍しいのかなあ、と考えていたリアラは、ある店の前で足を止めた。
「どうしたの、リアラ?」
「あ、えっと、ここ寄っていってもいいかな?」
リアラが指差したのは、小さな本屋。ガラス張りのショーウィンドウには店おすすめの本が並んでいる。何か、ほしい本でもあるのだろうか。
「いいわよ」
「ありがとう、すぐ終わるから」
礼を述べ、リアラは店の中に入る。彼女に続き、レディとトリッシュも店の中に入る。
何かを探しているのか、天井にぶら下げてある案内を見ながら、リアラは店内を歩く。しばらくすると、あるジャンルのコーナーで足を止め、棚に並ぶ本を目で追い始めた。
「あ、あった!」
嬉しそうに声を上げてリアラが手に取ったのは、花言葉の本。それを見た二人は首を傾げる。
「花言葉?」
「あら、ずいぶんロマンチックね」
「小さい頃、よく母様に花言葉を教えてもらったの。母様、花が好きだったから…。その影響で、私も好きになって。家にも本はあるけど、買ってもいいかな、って」
そう言ってはにかむリアラに、二人は優しい笑みを返す。
「そう…。いいんじゃない、たまにはそういうのも」
「私達はここで待ってるから、買ってくるといいわ」
「ありがとう、二人とも。じゃあ、ちょっと行ってくるね」
手の中の本を大事そうに抱え、リアラは小走りでレジに向かった。