夕食を食べ終え、シャワーを浴び終えたダンテはソファに座ってくつろいでいた。リアラは入れ替わりにシャワーを浴びに行っている。
興味もないテレビのニュースを聞き流しながら、ダンテは窓辺に腰かける気配に呼びかける。
「…なあ、レイ」
「何、ダンテ?」
窓の外を眺めていたレイザードはダンテの呼びかけに振り向く。
「…お前がリアラの魔力を受け取る以外に、リアラの魔力を安定させる方法はないのか?」
ダンテの問いにレイザードは目を見開くが、意図を察したのか静かに問い返す。
「…あの子のことが、心配?」
「…ああ」
頷くと、ダンテはテレビの電源を切る。プツン、という音の後に静寂が部屋を満たす。それを合図とするかのように、レイザードが口を開く。
「…そうね、今のところはそれしか方法がないわ。私は魔具だから主であるあの子から魔力をもらえるのは力になるし、私からしたら一方的な関係ではないのだけれど」
「十年前からあの状態なんだろう。お前がリアラの魔具になる前はどうしてたんだ?」
「ゼクスが自分の魔力でリアラの魔力を抑えてたわ。毎日、魔力をコントロールする訓練はしてたけど、満月の日はまだ覚醒したばかりのあの子には抑えきれなかったから」
「…そうか」
一旦言葉を切り、ソファの肘掛けに肘をついて思案するように目を伏せると、ダンテはレイザードに尋ねる。
「…俺にも、お前と同じことはできるか?」
その言葉にレイザードは再び目を見開く。ダンテの目は真剣で、こちらを真っ直ぐに見つめていた。
腕を組み、レイザードはダンテを見つめ返す。
「…今のあなたなら、できると思うわ。ただ、あなたは半魔だし、あの子と血が繋がってないから、リスクは高いわよ」
私は悪魔だし、あの子と血の繋がりがあるから大丈夫だけど、とレイザードは続ける。
「あの子なら自分の魔力を相手の魔力の形に合わせて変化できるからリスクは低くなるけど、それでも拒否反応が出ないとは限らない。所詮は他人の魔力だもの。後はお互いの気持ち次第よ」
それでもやるの?そう問いかけるレイザードにダンテは頷く。
「ああ。少しでもリアラが苦しまずに済むならやるさ」
「…そう」
一度目を閉じると、レイザードは柔らかな声音で言う。
「そこまで言うなら、私は止めないわ。…リアラを大切にしてくれてありがとう」
レイザードが微笑んだその時、バスルームの扉が開き、リアラが姿を現した。