リアラの部屋の前に来ると、ダンテは扉をノックする。
「リアラ、俺だ。…入るぞ」
部屋の主の返事を待たずにダンテは扉を開ける。ベッドのある方へと視線を向けると、ベッド上に鎮座する白い塊と傍に座るレイザードの姿を見つけた。こちらに気づいたレイザードが微笑む。
「久しぶりね、ダンテ」
「ああ。…リアラは?」
「布団にくるまってるだけよ。ほらリアラ、ダンテが帰ってきたわよ」
傍らの白い塊にレイザードが声をかけるが、塊はピクリとも動かない。ダンテは二人のいるベッドに近寄る。
「レイザード、リアラと少し話をさせてくれないか?」
「わかったわ」
頷き、ベッドから立ち上がったレイザードと入れ替わるように、ダンテはベッドの縁に腰かける。
「リアラ」
「……」
無言のリアラにダンテは優しく声をかける。
「お前に怖い思いをさせたりしないから。だから、顔を見せてくれないか?」
「…」
少し間を置いてもぞもぞと塊が動き、布団の中からリアラが顔を出した。頭の上にある青みを帯びた白い狼の耳は不安そうにぺたりと伏せられている。
「身体は大丈夫か?」
「…はい。今日は不思議と落ち着いてるので」
「いつもはそうじゃないのか?」
「毎回、っていうわけではないんですけど…結局は悪魔が現れて気が立ってしまって…」
そういえば、満月の日には野宿をしているとレイザードが話していた。魔力を抑えるのに必死で上手く感情をコントロールできないだろうし、気を休めることもできないだろう。
でも、と小さな声でリアラが続ける。
「ここだと落ち着くんです…安心、できるから」
だから落ち着いていられるんだと思います、そう言うリアラにダンテは目を見開いたが、次の瞬間には優しく目を細める。
「…そうか」
手を伸ばしてリアラの頭をくしゃくしゃと撫でてやると、ダンテは優しい声音で続ける。
「晩飯、作ってくれたんだろ?一緒に食おう」
「…はい」
ようやく笑みを浮かべて、リアラは布団からゆっくりと身体を起こした。