日も落ち、辺りが闇に包まれた頃。ダンテは事務所への道を急いでいた。
(少し時間がかかっちまったな…)
きっと、リアラは早かったですね、と言うのだろうけど。自分としては、なるべく彼女を一人にさせたくなかった。
一ヶ月前に見た、あの光景が蘇る。悪魔相手に力をぶつける姿、そして、毎回、満月の日にはこうなるのだときっかけを話した姿。泣きじゃくる彼女の姿が忘れられない。
「………」
様々な想いを巡らせながら、事務所に着いたダンテは玄関の扉を開ける。
「ただいま」
声をかけるが、リアラの姿はどこにもない。辺りを見回していると、トントンと階段を下りる音が響き、ダンテは顔を上げる。
『帰ってきたか』
「ケルベロスか。リアラは?」
『部屋にいる。レイザードと一緒だ』
「レイザードと?…そうか、満月の日には元の姿に戻れるんだったな」
きっと、彼女を心配して傍にいるのだろう。ダンテは続けてケルベロスに尋ねる。
「どうしてリアラは部屋にいる?具合が悪いのか?」
『いや、至っていつも通りだ。…ただ、あの姿を見られたくないらしい』
『あの姿』という言葉に、ダンテは全てを察した。
人の姿でありながら、狼の耳と尾がついた明らかに他の人とは違う姿。事情を知る自分であっても、その姿を見せるのは怖いのだろう。
だが、それでも。
「…少し話してくる。ケルベロスはここにいてくれ」
『言われなくてもそうする。さっさと行け』
その言葉に促され、ダンテは二階への階段を駆け上がった。