「………」


しばらく沈黙が続いた後、会話を終えたのか、リアラが顔を上げた。


「どうだった?」

「通じましたよ。元の姿に戻れないか聞いてみたら、ダンテさんの許可が出れば戻れるそうです。契約が切れたわけじゃないので、許可がないと戻れない、と。身体の大きさは自由に変えられるそうです」

「そうか、俺は構わないぞ」

「わかりました。ケルベロス、戻ってもいいって」


リアラが魔具に呼びかけると、ポウ…と白い光が魔具から放たれ、次の瞬間には三つの頭を持つ、尾の短い黒い大型犬がそこに座っていた。
肩のこりをほぐすようにコキコキと首を動かし、魔具ーケルベロスが口を開く。


『ふう…久しぶりにこの姿になったわ。助かったぞ、娘』

「どういたしまして」

「久しぶりだな、ケルベロス」


ダンテが声をかけると、ケルベロスはダンテを睨みつける。


『何が久しぶりだ、我を使わなくなったと思ったら人間になぞ売りおって…。契約が切れていないせいで、元の姿に戻ることもできなかったわ』

「それは悪かった」


少しも悪く思っていない顔でダンテは肩を竦める。ため息をつくケルベロスに、リアラは話しかける。


「十年近く経っても、ダンテさんのことわかるんだね。気配でわかるの?」

『ああ。お主、リアラといったか。我に近い気配を持つということは…お主、ゼクスの娘か?』

「ええ、そうよ」

『そうか。ゼクスがスパーダと共に魔帝に反旗を翻してから何百年も会っていないが…スパーダと同じように子を成していたとはな』


一人で納得しているのかふむ、と頷くと、ケルベロスはリアラを見上げる。




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