事務所に戻り、レディに依頼完了の連絡を終えた二人は紅茶を飲みながら一息ついていた。
「しっかし、あのレディが仲介料を取らないとはな…珍しいこともあるもんだ」
「でも、レディには悪いことをしてしまいましたね…今度、何かでお詫びしなきゃ」
レディに事の次第を話し、仲介料を渡せないことを詫びたリアラに、レディは「気にしなくていいわよ、今度の仕事で報酬をもらった時にその分ももらうわ」と答え、今回は仲介料はなし、ということになった。レディには申し訳ない思いで一杯だ。
どうしようかと考えるリアラにダンテは苦笑する。
「どうせ今度の仕事で仲介料取るんだろ、それでいいじゃねえか」
「よくないですよ、レディにだって生活ってものがあるんですから」
はぁ、とため息をつくリアラに肩を竦めて見せて、それよりも、とダンテは続ける。
「そいつ、元の姿には戻れないのか?」
ダンテの言う『そいつ』とは、リアラの隣に置かれた魔具・ケルベロス。
リアラは魔具に視線を移すと、うーん、と唸る。
「戻れない、っていうことはないと思いますけど…以前はダンテさんが持ってたんですよね、契約とか、そういう理由で戻れないんじゃないですか?」
ダンテさんが持ってた時はどうしてました?と尋ねるリアラに、今度はダンテが唸る。
「ずっと武器のままだったな…元の姿に戻るとなると、大きすぎて事務所が壊れかねねえし」
「じゃあ、何で元の姿に戻れるかとか聞いたんですか」
「何となくだ」
ダンテの言葉に再びため息をつき、リアラは魔具を見つめる。
「…本人に聞いてみましょうか?」
「そんなことできるのか?」
「親戚のようなものですから、テレパシーは通じると思います。ちょっとやってみますね」
「ああ」
ダンテが頷くと、リアラは再び魔具に視線を移し、じっと見つめた。