『女、貴様ぁ…!』
「半魔の回復力を舐めるな」
リアラは悪魔を睨みつけたまま、左足の様子を確認する。
(まだ完全には治ってないか…。かなり強い酸性なのね、あの体液…)
半魔ゆえの治癒力で治り始めているものの、まだ傷口は塞がっていない。
(けど、これだけ動ければ充分ね)
そう納得すると、リアラは反対側にいるダンテに言う。
「ダンテさん、ちょっと離れててくださいね」
リアラの意図を察したのか、ダンテが悪魔から距離をとる。それを気配で確認すると、リアラは両手をかざした。彼女と悪魔を囲むように無数の氷の結晶が生まれ、月の光を受けてキラキラと輝く。
『貴様、何を…!』
「そのおしゃべりな口を塞いであげる」
す、と目を細めると、リアラはその名を呟く。
「ダイヤモンド・ダスト」
次の瞬間、雪の結晶に触れた悪魔は音を立てて凍りつき、氷の像と化した。
さて、あとはどうするか、とリアラが考えていると、ダンテが声を上げた。
「リアラ、最後に一緒にこいつをぶっ壊そうぜ!」
「壊すって、時間が経てばこの悪魔は壊れますよ」
リアラの技の一つである『ダイヤモンド・ダスト』は、氷の結晶に触れた相手を凍らせるとともに、一定時間が経てば氷とともに砕け散らせる。だから、放っとけば勝手に壊れるのだが、ダンテはそれをわざわざ壊そうと言うのだ。
再びダンテが声を上げる。
「いいだろ、最後くらい派手に行こうぜ!」
「全く…」
ため息をつき、リアラはダンテに尋ねる。
「斬り壊す感じでいいですか?」
「お、ディアクト使うのか?」
「ええ」
「じゃあ、あの技にしてくれよ、『ドライブ』。俺も同じ技でやる」
「もう勝手にしてください…」
はぁ、とため息をつくと、リアラは腰のベルトに付いたアクセサリーに手を添える。リアラの魔力に反応したそれは、双槍へと姿を変えた。
ディアクトを両手で構え、リアラは言う。
「じゃあ、いいですね」
「おう」
頷き、ダンテもリベリオンを構える。
お互いに気配で準備が整ったことを確認した次の瞬間、二人は動いていた。