『そんな呑気に話していていいのか?こうしている間にも、俺は力を手に入れるぞ?』
「何…?」
悪魔の言葉に、ダンテは眉を寄せる。辺りを見回していたリアラがあることに気づく。
「…斬り落とされた触手は、どこに行ったの?」
ダンテに斬り落とされた触手が見当たらない。以前戦った悪魔の仲間であるなら、死ぬ時に溶けて消えるはずだ。なのに、触手が落ちていた場所には、その形跡がない。
まさかー。
バッと顔を上げて、リアラは依頼主の店を見る。店のガラスは先程の悪魔の攻撃のせいかところどころ溶けて穴が空き、扉にも大きな穴が空いていた。そして、店の中から感じる悪魔の気配。
「…っ、店の中に…!」
『気づくのが遅かったなあ』
悪魔がそう言うと同時に、ズルリと音を立てて触手が店の扉から出てくる。触手は何かを抱えていて、悪魔にそれを渡した後、形が崩れ、溶けて消えた。
悪魔は受け取ったそれを、月明かりにかざす。リアラの目に映ったのは、銀色のリングにそれぞれの鎖で繋がれた冷気を放つ三つの棍、そして、自分に近い気配を放つー。
「ーっ、ケルベロス…!」
『ほう、お前、これを知っているのか』
ゆらゆらと触手を揺らしながら、悪魔は嬉々として話し始める。
『俺は強い念が込められた武器が大好物でなぁ…。特に怨念のこもった、人間で言ういわく付きの物は極上だ。俺は武器を喰らうと共に、それに込められた念を力にするのさ。魔具もまたしかり…悪魔の強い念が込められてるんだからなぁ、旨いのは言わずもがな、だ』
「っ…」
『とはいえ、魔具はまだ食ったことがなくてな…ちょうどいい機会だ、喰って力にさせてもらうぞ』
そう言い、悪魔がガパリと頭部を開き、手に持つ魔具を投げ込もうとした、次の瞬間。
ズパッ
『!』
何かが切れる音がし、悪魔の触手が崩れ落ちる。重力に従い、頭部に向かって落下するそれに白い影が飛びつき、すぐに離れていった。触手はそのまま悪魔の頭部に落ち、ベチャリ、と音を立てる。
「自分の腕でも食べてろ、馬鹿が」
吐き捨てるような言葉に、悪魔は後ろを振り向く。デビルハンターの女が先程まで自分が持っていた魔具を手にしていた。