夜も更け、街の人々が寝静まった頃。ダンテとリアラは店の屋根に登り、ターゲットである悪魔の出現を待っていた。
「もうそろそろか。リアラ、どうだ?」
「今のところはまだ悪魔の気配を感じませんね。けど、毎晩来ているということでしたし、今夜も来るでしょうね」
「ああ。まあ、焦ることはない。ゆっくりと待ってりゃいいさ」
「はい」
頷くリアラに、ダンテは尋ねる。
「昔戦った悪魔に似てるって言ってたな。仲間の可能性は高いか?」
「そうですね、話を聞いた限りではその可能性は高いと思います。ただ、ある物全てを食べるんじゃなく、いくつか選んで食べている辺り、こっちの方が知能が高いと思います」
「そうか」
頷き、ダンテは座ったままリアラを見上げる。
「…何か、気になることでもあったか?」
「え?」
一呼吸置いてダンテが言った言葉に、リアラは目を瞬かせる。
「店に入ってから、何か気になるのか時々辺りを見回してただろ。どうしたのかと思ってな」
「ああ、ええっとですね…」
どう説明しようか迷いながら、リアラは口を開いた。
「…私に似た、気配がしたんです」
「リアラに似た気配?」
「似た、というか、近い、というか…お店に入った時、微かにですけど、そんな気配がしたんです。それで気になって…」
「なるほどね…」
頷くダンテに、今度はリアラが尋ねる。
「ダンテさん、このお店でどんな魔具を売ったか覚えてますか?」
「売った魔具か?うーん…」
売ったのはもう十年くらい前だ。この店の他にもいくつかの店を回っているし、どこで何を売ったかはあまり覚えていない。
朧気な記憶を辿りながら、ダンテは呟く。
「確か…ケルベロス、だったと思うが」
「ケルベロス…たぶん、それですね」
「それ?」
頷くリアラに、ダンテは首を傾げる。ああ、と何か思い出したようにリアラは説明する。
「ダンテさんにはまだ話してませんでしたね。ケルベロスと私、父様は親戚のようなものなんです。魔犬と魔狼…似たような存在ですから」
父様から聞いたことはありませんか?と尋ねられ、ダンテはああ、と頷く。
「そういえば、そんな話をゼクスから聞いたことがあったな」
ダンテがそう答えたその時、何かを感じ取ったのか、リアラが表情を変えた。
「…来ましたね」
「みたいだな」
立ち上がり、ダンテは背に担いでいたリベリオンを手にする。リアラもレイザードを鉤爪に変化させると、ダンテと顔を見合わせる。
「じゃあ、行くか」
「はい」
頷き、二人は店の屋根から飛び降りた。