次の日、相変わらず依頼の来ない中、ダンテが椅子に座って惰眠を貪り、リアラがリビングの掃除をしている時だった。
「お邪魔するわよ」
ギィ、と軋んだ音を立てて事務所の扉が開き、レディが姿を現した。気づいたリアラは嬉しそうに笑う。
「レディ!久しぶり!」
「久しぶり、リアラ。一ヶ月ぶりかしら?」
「そうだね。今、お茶淹れるね、ちょっと待ってて」
「ゆっくりでいいわよ、ありがとう」
急いでモップを片付け、リアラはキッチンに向かう。自然な動きでソファに座ると、レディはダンテに話しかける。
「相変わらずひまそうね。少しは仕事をしたら?」
「いつものことだろ、ほっとけ。それに依頼自体ないんだ、ひまにもなる」
「あんたが選り好みしてるからでしょ。ちょっとはあの子のことも考えてやりなさいよ…」
やれやれといった風にレディがため息をついていると、リアラがティーカップの乗ったトレイを持ってキッチンから出てきた。
「お待たせ。はい、どうぞ」
「ありがとう。…あら、苺の香り。フルーツティー?」
「うん、春限定の苺の紅茶。最近見つけたお気に入りの紅茶屋さんで買ったの」
「そう。…うん、おいしいわ。いい店見つけたわね」
「本当?嬉しい。よかったら、今度一緒にそのお店に行かない?」
「いいわね。じゃあ、時間がある時に連絡するわ」
「うん」
嬉しそうに笑うリアラを、優しい目をして見守るダンテ。リアラが来てからずいぶん変わったものだと思いつつ、レディはカップを置く。