「風呂空いたぞー。…どうかしたか?」
机の上に置かれた愛銃を見つめるリアラに、ダンテは首を傾げる。
「ダンテさん、この銃、なんですけど…」
そう言うリアラの手には彼女の愛銃が握られていて、言いたいことを察したダンテが目を細める。
「ああ…ニールの造った銃だよ。リアラの銃も、婆さんが造ったやつだろ?」
「…知ってたんですか」
「初めてその銃を見た時に、何となく、そう思ってな」
そう言って自分の銃を見つめるダンテは、昔を懐かしんでいるようだった。
「まさか、同じ形をした銃がもう一つあるとは思わなかったけどな。けど、俺はこいつらを何十年も使ってるんだ、見間違えたりはしない」
「…ニールさんの、知り合いの方に頂いたんです。スミスさんという方で、ニールさんが生きている時に、その銃の試作品を頂いた、と。五年前に私がスミスさんの依頼を受けた時に、お礼に頂いたんです。…その時、この名前と、狼の彫刻をしてもらいました」
リアラはダンテに、手の上の銃を差し出す。銃身には、『White wolf』の文字と、狼の彫刻。そうか、と優しい笑みを浮かべると、ダンテはリアラに尋ねる。
「…触らせてもらっても、いいか?」
「はい」
リアラが頷くと、ダンテはそっとリアラの銃を手に取り、じっと見つめる。
「…婆さんの魂は、ここにも残ってたんだな」
「…はい。私、ニールさんに感謝してます。いつもこの子に、守ってもらっているから」
「そうだな。…俺も、いつもこいつらに守ってもらってる」
自分の銃を見つめた後、ダンテはリアラに銃を返そうと顔を上げる。が、彼女はじっと机の上の銃を見つめていた。興味深そうに見つめるその瞳に、ダンテはくすりと笑みを漏らす。
「触ってみるか?」
「!…いいんですか?」
「ああ」
本来なら命と同じくらい大切な銃を他人に触らせることなんてしないのだが、リアラなら、いいと思えた。同じくニールの造った銃を持ち、心許している彼女なら。
ダンテが頷くと、リアラは再び机の上の銃に視線を移し、ゆっくりと、壊れ物でも扱うかのように丁寧な動きで銃を持ち上げた。一通りエボニーを見つめ、次いでアイボリーを見つめた彼女は嬉しそうに呟く。
「…やっぱり、きれい…」
「…そうか」
彼女から見たら、ニールの造った銃はそう見えるのか。くすりと笑みを零し、ダンテはリアラを優しく見守る。
この後、夜が更けるまで、ダンテとリアラはお互いの銃について語り合ったのだった。