「遅いな…」


静かな事務所の中、ポツリとダンテは呟く。
リアラがクレアを連れて事務所を出てから三時間、一向に帰ってくる気配がない。
あの後、リアラを交えてクレアと少し話をした後、リアラはクレアを孤児院に送るために仕事服に着替えて事務所を出ていった。万が一悪魔が出ても戦えるように、と。
そこまで考えているのだから何もないとは思うのだが、ここまで帰りが遅いとさすがに心配になる。よほど強い悪魔にでも出くわしてしまったのだろうか。
迎えに行くか、とダンテが椅子から腰を上げたその時、玄関の扉が開いた。


「リアラ!」


扉の隙間から姿を現した待ち人にダンテは駆け寄る。


「遅かったじゃないか、心配したんだぞ」


ダンテの言葉に、リアラは困ったような顔をして口を動かす。が、その口からつい三時間前まで聞こえていた声は出ない。


「……」

「どうした?…悪魔に、やられたのか?」


彼女の異変を察しダンテが問いかけると、リアラは申し訳なさそうな顔でこくりと頷く。


『すみません、もう少しで孤児院に着くという時に悪魔に襲われてしまって…。説明しますから、聞いてもらえますか?』


テレパシーで頭に直接話しかけてくるリアラに、ダンテは静かに頷いた。




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テーマ「人外ファンタジー」
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