「院長さん、少しの間だけ、クレアちゃんを私に預けてもらってもいいでしょうか。私が責任を持って送り届けますから」
「え、ですが…」
「迷惑なんてことはありませんから。ダンテさん、いいですか?」
「…ま、このままじゃ帰りそうにないしな」
苦笑しながらダンテは答える。本当はスラム街にある自分達の事務所に連れていくのは危険だが、リアラがこう言っているのだ、心配はないだろう。それに、自分もいることだし。
しばらくためらっていた女性はため息をつくと、リアラ達に頭を下げる。
「…すみません、ではお願いします。クレア、ちゃんといい子にしているのよ」
「うん!」
元気よく頷いたクレアの頭を撫で、再びリアラ達に一礼すると、女性は去っていった。女性を見送ってから、リアラはクレアに声をかける。
「じゃあ、行こっか。はぐれないように、ちゃんと手を繋いでいてね」
「うんっ!」
手を繋いで歩き出した二人に、少し騒がしくなりそうだと苦笑しながら、ダンテも歩き出した。