「買う物はこれくらいか?」
「はい」
三時間後、大きな紙袋を抱えて二人は帰り道を歩いていた。ダンテの首には先程買ったばかりの淡い灰色のストールが巻かれている。
ダンテを見上げ、リアラは微笑む。
「よく似合ってますよ、ダンテさん」
「ありがとな。けど、買ってもらってよかったのか?」
「いいんです、こっちもいろいろと買ってもらってますから、そのお礼です」
一層笑みを深めるリアラにつられ、ダンテも笑みを浮かべる。
「…そうか。ありがとな、大切にする」
「はい」
ゆっくりとしたペースで歩きながら、二人は話を続ける。
「夕飯が楽しみだな」
「ピザとストロベリーサンデーだからですか?どっちもダンテさんの好きな物ですものね」
「ああ。とびきりうまいのを頼むぜ」
「がんばります」
くすくすと笑いながら答えたリアラは、自分達の歩く先にある花屋にいた少女の姿を見て首を傾げる。
「あれ?」
「どうした?」
「あの子、どこかで見たことあるなって思って…」
リアラが指差した先にダンテは視線を移す。
7、8歳くらいだろうか、蜂蜜のように濃い金色の髪に緑色の目をした少女は花屋の店員にお礼を言っている。やがて振り返った少女はこちらに気づいたらしい、自分達を見ると笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん!」
「クレアちゃん!どうしてここに…」
「私たちのところでお花をそだててるから売りにきたの!」
そう言って抱きついてくるクレアにリアラは慌てる。
「クレアちゃん、危ないよ」
「リアラ、それ貸せ」
そう言うと、ダンテは空いていた手でリアラの持っていた紙袋をひょいっと持ち上げる。
「重くないですか、ダンテさん?」
「これくらいどうってことない」
「ありがとうございます」
リアラが微笑んで礼を言ったその時、二人に向かって一人の女性が近寄ってきた。
「こんにちは。先日はお世話になりました」
声をかけてきたのは、以前二人に仕事を依頼してきた孤児院の院長だった。リアラは微笑んで挨拶を返す。
「院長さん、お久しぶりです。そちらはお変わりないですか?」
「ええ、おかげさまで。あれ以来悪魔が出ることもなく、皆穏やかな日々を過ごしています」
「そうですか、それはよかったです」
「本当にありがとうございました。さあクレア、そろそろお家に帰りましょう」
「やー!クレア、お姉ちゃんともうちょっといたい!」
女性が帰りを促すが、クレアは首を大きく振り、リアラの服の裾をぎゅっと掴む。宥めるようにクレアの頭を撫でると、リアラは女性にお願いする。